先日、みっくん(長男一歳)と赤ちゃん(約2ヶ月)を連れて国立公園へ行った時のこと。
2時間ほど過ごし、暑さでグズってきたみっくんを片腕に抱え、もう片方の手で赤ちゃんの乗ったベビーカーを押す。進んでいた方向に、若者の集団がお酒を飲んで馬鹿騒ぎしているのが見えた。嫌な予感がしたのだが、早く駐車場に着きたかったので迂回せずに進み、集団の横を通った。
私が通り過ぎてしばらく経ってから、後ろから
「ニーハオーーーッ!チネチネー!」と笑いながら声をかけられた。
数ヶ月前に自分で染めた髪が思ったより明るくなりすぎてしまい、これじゃあ一瞬アジア人か分からないのではないだろうか、なんて思っていたのだがいらぬ心配だった。髪が何色になろうが、前から見ても横から見ても、平たい顔は変わらない。もし夫がクレーンゲームに入っていたら、鼻フックならぬ眉間フックで釣り上げる。その顔面の奥行きが私には無い。

こういう場に遭遇した時の対応は、その時々による。
ホームセンターで年配の陽気な男性に「ニーハオ!」と正面から声をかけられた時は「こんにちは」と笑顔で返した。攻撃性の高そうな中東系十代のグループに侮辱的に言われた時は、完全無視した。

そのまま進むか一瞬迷った。赤ちゃんを二人連れているので、母親としてとるべき行動は「無視」が最良だろう。しかし暑さでイライラしていたので怒りの感情が理性を上回り、思わず振り返り睨みつけると、ビールのグラスを持った男が意表をつかれた顔をした。
恐らく彼は私が「大人しく弱く反撃してこないアジアの女」だから声をかけたのだろうが、私もまた彼が「集団の中でイキっている悪になりきれない頭の弱い男」であることを見抜いた。
何を言ったかよく覚えていないのだけど、要約すると「私に挨拶したいのでしょう、何言ってるかわからないから一人でここまで来い。せっかく足を止めてあげたのだから今すぐ来い」的なことを、ここには書けない表現で言った。仲間が二人、私を宥めようと寄ってきた。

もし相手が危なそうな男だったら、睨むことすら出来ずにその場を去っただろう。
弱い者相手にしか喧嘩のできない小物同士が虚勢を張った結果の、小学校の帰りの会で先生に報告されそうな程度のつまらない小競り合いだ。
人間も動物だ。
その日の夜は肉を食べて、白髪を抜いて髪のトーンを下げる染料を購入した。

終わり

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